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椅子から座布団を持ち上げたら、裏側がひんやりと湿っていました。顔を近づけると、汗のにおいがかすかに残っています。前に外して洗ったのがいつだったか、思い出せません。
洗濯機に放り込んでしまいたい。けれど、中がかたよってごわごわになったら、もう元には戻せない。結局そのまま椅子へ戻しました。
座布団を洗えるかどうかは、外側の生地ではなく中身で決まります。
洗濯表示と中材。この2つを先に確かめるだけで、迷う場面はほとんどなくなります。確かめ方、洗い方、乾かし方の順に見ていきます。つまずく人がいちばん多いのは、最後の乾かし方です。
洗う前に確かめる2つのこと
座布団の側面か、カバーの内側を探してみてください。細長いタグが縫い付けられています。見るのは2か所です。洗濯表示の記号と、「詰めもの」の欄。この2つだけで判断できます。
| 表示 | 意味 | できること |
|---|---|---|
| 洗濯桶に手のマーク | 手洗いのみ | 浴槽での押し洗いまで |
| 洗濯桶に数字 | 洗濯機で洗える | 数字は水温の上限 |
| 洗濯桶に× | 家庭では洗えない | カバー洗いと部分拭き |
| 三角に× | 塩素系を使わない | 漂白剤は酸素系のみ |
| 四角の中に横線 | 平干し | 竿にかけない |
タグが切れていたり、そもそも付いていない座布団もあります。その場合は中身から見分けます。手のひらで真ん中を強く押してください。
ゆっくり沈み、離すとゆっくり戻るならウレタン系です。
指の跡がすぐ消えてふわりと戻るなら、ポリエステル綿。かさりと乾いた音がしたら、そば殻が入っています。持ち上げたときにずっしり重く、しっとりした手触りのものは、木綿わたの和座布団であることが多いです。
中身で決まる、洗える・洗えない
| 中材 | 家庭で丸洗い | 理由と注意 |
|---|---|---|
| ポリエステル綿 | できるものが多い | 表示に従う。乾くまで1〜2日かかる |
| 木綿わた(和座布団) | 向かない | 水を吸うと縮み、中でかたよる。打ち直しが本筋 |
| ウレタン(低反発・高反発) | できない | 水を含むと素材が崩れ、高さが戻らない |
| ビーズ | 表示しだい | 中袋が破れると散らばる。洗濯機は避ける |
| そば殻 | できない | 濡れると傷む。日に干して使うもの |
| 羽根・フェザー | 表示しだい | 乾ききらないとにおいが残りやすい |
並べてみると、家庭の洗濯機で丸ごと洗えるものは意外と少ないと分かります。厚みのある座布団ほど、その傾向は強くなります。中まで水が入り、そのぶん乾かなくなるためです。
ウレタンだけは、水につけないでください
低反発・高反発と書かれたクッションの中身は、ウレタンフォームです。細かい泡が連なってできた素材で、水を含むと自分の重さで泡がつぶれます。乾いても、元の高さには戻りません。
一度水につけたウレタンは、買い替えになります。
洗濯機の脱水も同じです。回転で引き裂かれ、内側がぼろぼろに崩れることがあります。ウレタンの座布団は、カバーを洗い、本体は風を通す。この2つだけで扱ってください。
厚みがあって座り心地のよいクッション座布団ほど、丸洗いには向きません。だからこそ、表面の生地で汚れを止める作りのものが出てきています。撥水生地を採用した雲のやすらぎクッション座布団もその一つです。
まずはカバーだけ。これがいちばん効きます

汗も皮脂も、最初に受け止めるのはカバーです。中材まで届いているのは、思っているより一部にすぎません。
カバーを月に1度洗うだけで、におい方はずいぶん変わります。しかも、失敗のしようがありません。
- 外す前に、ファスナーの位置と向きを写真に撮っておく
- 裏返してから、洗濯ネットに畳んで入れる
- ファスナーは閉めた状態で洗う(生地を傷めないため)
- 洗剤は中性のものを、規定量どおりに
- 脱水は短めにして、しわを伸ばしてから干す
乾いたカバーを戻すときは、四隅から先に入れます。角が合っていないと、座ったときに片側だけ引っ張られます。
カバーの付いていない座布団なら、上から掛けられるカバーを1枚買うほうが早い場合もあります。洗う手間が、そこで半分になります。
本体を洗えるとき|浴槽での押し洗い
洗濯表示に手洗いのマークがあり、中身がポリエステル綿なら、浴槽で洗えます。洗濯機より手間はかかります。そのかわり、中材がかたよりにくく、仕上がりが安定します。
用意するもの
- 中性洗剤(おしゃれ着用のもの)
- ぬるま湯(30度前後。熱いお湯は縮みのもとになります)
- 大きめのバスタオル2〜3枚
- 平干し用のネット、または物干し竿2本
晴れが2日続く見込みの日に始めてください。1日では乾きません。
手順は6つです
- 浴槽に30度前後のぬるま湯を、座布団が沈む深さまで張る
- 洗剤を溶かしてから座布団を入れ、全体に水を含ませる
- 足の裏か手のひらで、上から体重をかけて押す。20回ほど
- 汚れた水を抜き、新しい水を張って同じように押す
- 泡が浮かばなくなるまで、水を替えて繰り返す
- 最後に押して水を抜き、浴槽のふちに掛けて20〜30分置く
押すときに、ねじらないこと。中材が片側へ寄って、乾いたあとに段差として残ります。
すすぎを急ぐと、あとで黄ばみます
洗剤が残ったまま乾くと、その成分が空気に触れて色を変えます。これが黄ばみの正体のひとつです。水を替える回数は、最低でも3回。押したときに泡が出なくなるまで続けてください。
柔軟剤は使わなくてかまいません。中材の繊維がつぶれ、戻る力が落ちることがあります。
脱水は、絞るのではなく落とす
ここでの一手が、乾く時間を半日変えます。
ぞうきんのようにねじって絞らないでください。繊維の並びが崩れ、その形のまま固まります。
浴槽のふちに二つ折りで掛け、自分の重さで水が落ちるのを待ちます。20分ほどで、持ったときの重さがかなり変わります。
そのあと、バスタオルで上下から挟み、体重をかけて押します。タオルが水を吸い取ってくれます。洗濯機の脱水を使うなら、1分ずつ、様子を見ながら回してください。長く回すと中材がかたよります。
タオルが重くなったら替えます。ここで一度手間をかけると、干す時間が短くなります。
干し方で、仕上がりの8割が決まる

洗うところまでは、たいていうまくいきます。差がつくのは、そのあとです。
竿にかけず、平らに寝かせる
物干し竿に二つ折りで掛けると、折り目に水と中材が集まります。そこだけ乾かず、厚みも偏ります。平干しネットの上に、広げたまま寝かせてください。ベランダに渡した2本の竿の上でも代わりになります。
下に空間を作るのが大事です。地面や床にじかに置くと、裏面がいつまでも乾きません。2時間おきに裏返し、そのたびに軽く手で叩いて中材をほぐします。
乾いたかどうかは、中心を触って決める
表面はすぐ乾きます。だまされやすいのは、ここです。
座布団の中心を手のひらで押して、ひんやりするならまだ乾いていません。
周りと同じ温度になり、押した感触に重みがなくなったら完了です。厚みが5cmを超えるものは、丸2日みておくと安全です。
直射日光は、生地の色が抜ける原因になります。午前中だけ日に当て、午後は風通しのよい日陰へ移すやり方が扱いやすいです。
よくある3つの失敗と、その戻し方
生乾きのにおいが残った
いちばん多い失敗です。原因は、ほぼ乾燥不足の一択です。
この場合、もう一度洗ってもにおいは消えません。においのもとが中に残ったままだからです。やり直すなら、洗い直したうえで、扇風機かサーキュレーターの風を座布団の側面に当ててください。
浴室乾燥機のある家なら、そこへ持ち込むのが確実です。天気に左右されません。
厚みが片寄って、段差ができた
ねじって絞ったか、竿に掛けて干したときに起こります。
完全に乾く前なら、まだ手で戻せます。薄い側から厚い側へ、中材を指で押し出すようにほぐしてください。
乾ききってしまうと、その形で固まります。ここは戻りません。
白い生地が黄ばんだ
洗剤の残りか、汗の成分が残ったまま乾いたときに出ます。薄いものなら、酸素系の漂白剤をぬるま湯に溶かし、30分ほどつけてから洗い直すと薄くなることがあります。
塩素系は使わないでください。生地が傷み、色柄物は色が抜けます。時間の経った黄ばみは、家庭では戻りきりません。そこは割り切って、カバーを掛けて使う判断も必要です。
洗えない座布団の手入れ
ここまで読んで、自分のものは洗えない側だと分かった方も多いと思います。実際、洗えないもののほうが多数派です。
洗えなくても、できることは4つあります。
- 週に1度、風を通す。日陰に立てかけ、両面に風が当たる置き方にする
- 2週に1度、掃除機を弱にしてゆっくりかける。強いと生地を引っ張ります
- 汚れた場所は部分拭き。中性洗剤をぬるま湯で薄め、タオルに含ませて叩くように
- 拭いたあとは、水だけのタオルで洗剤を取り、風で乾かす
部分拭きでこすると、汚れが繊維の奥へ入ります。叩いて、タオルに移し取る感覚でやってください。
においが気になるときに使われるのが重曹です。表面に薄くふりかけ、2〜3時間置いてから掃除機で吸い取ります。においが和らぐことがあります。
できないこともあります。
中まで染み込んだにおいには届きません。白い粉が縫い目に残ることもあります。濃い色の生地では、粉の跡が目立ちます。試すなら、見えない場所で一度確かめてからにしてください。
季節と住まいで、洗う日を選ぶ
同じ手順でも、いつ洗うかで結果が変わります。
| 時期 | 向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | 向く | 湿度が低く、風がある |
| 梅雨(6〜7月) | 避ける | 2日置いても乾かないことがある |
| 夏(7〜9月) | 向く | 乾きは早い。日差しが強いので日陰へ移す |
| 秋(10〜11月) | 向く | 気温と湿度のつり合いがよく、いちばん扱いやすい |
| 冬(12〜2月) | 条件つき | 気温が低く乾かない。室内+送風で組み立てる |
住まいによっても事情が変わります。
北向きのベランダしかないマンションなら、外干しに期待しないほうが安全です。浴室乾燥機か、室内で送風という組み立てになります。
賃貸では、手すりに布団を掛けられない決まりの物件もあります。平干しネットを室内の物干しに載せる形を、先に考えておいてください。
家族4人分をまとめて洗うと、干す場所が足りなくなります。1日1枚ずつ、週末2回に分けるほうが失敗しません。
一人暮らしで浴槽のない部屋なら、本体は洗わない前提です。カバーを2枚用意して回すほうが、現実的で長続きします。
洗う頻度の目安

| やること | 頻度 | 補足 |
|---|---|---|
| カバーを洗う | 2〜4週に1度 | 汗をかく時期は2週に短縮 |
| 本体を丸洗いする | 年に1〜2度 | 洗える表示があるものだけ |
| 風を通す(陰干し) | 週に1度 | 手間の割に、いちばん効きます |
| 掃除機をかける | 2週に1度 | 弱でゆっくり |
| 向きと表裏を替える | 月に1度 | 厚みのかたよりを防ぐ |
丸洗いの回数を増やしても、良いことばかりではありません。洗うたびに、中材はわずかずつ傷みます。増やすべきは丸洗いではなく、風を通す回数のほうです。
コインランドリーとクリーニングという手
家で乾かしきる自信がないときに、外に頼る道が2つあります。
| 方法 | 向くもの | 気をつけること |
|---|---|---|
| コインランドリーの大型洗濯乾燥機 | ポリエステル綿・洗濯機可の表示があるもの | 高温乾燥で縮むことがある。低温を選ぶ |
| 寝具のクリーニング | 洗える表示のないもの、和座布団 | 受け付けない中材がある。事前に電話で確認 |
コインランドリーの強みは、乾燥まで数時間で終わる点です。生乾きの心配がほとんどありません。
弱みは温度です。ウレタンとビーズは持ち込まないでください。乾燥機の熱で形が変わります。
クリーニングは1枚あたり数千円かかります。座布団の値段によっては、買い替えたほうが安く済む場合もあります。毎年出すつもりなら、そこは計算しておいたほうがいいところです。
洗えない前提で選ぶ、という考え方
ここまでの話を裏返すと、こうなります。
厚みがあって座り心地のよい座布団ほど、丸洗いには向きません。中まで水が入り、乾かないからです。「洗えること」を最優先にすると、選べるのは薄いものだけになります。一日中座る人には、それがつらい。
そこで見方を変えます。洗える座布団を探すのではなく、汚れを中まで入れない座布団を選ぶ、という考え方です。
確かめるのは2つだけです。
- 表面の生地が、汗や飲みものをはじく作りになっているか
- カバーを外して洗える構造になっているか
この2つがそろっていれば、丸洗いの出番はほとんど来ません。日々のカバー洗いと、週1度の風通しで回せます。厚みは5層で約20cm。表面に撥水生地を使い、水や汗が中へ入りにくくした座布団もあります。
取り扱いの細かい条件は商品ごとに違います。雲のやすらぎクッション座布団の生地と構造の説明を読むと、週末の予定に「座布団を干す」と書かなくてよくなる暮らしが見えてきます。
仕様や価格は変わることがあります。最新は公式サイトでご確認ください。
よくある質問
洗濯表示のタグが切れていて、中身が分かりません
手で押した感触で見分けられます。ゆっくり沈んでゆっくり戻るならウレタンで、洗えません。すぐ戻るならポリエステル綿の可能性が高いです。判断がつかないときは、カバーだけ洗って本体は風を通してください。
洗濯機の毛布コースなら丸洗いできますか
洗濯表示に洗濯機のマークがあるものだけです。表示があっても、縦型では容量が足りず水が回りきらないことがあります。ドラム式は座布団が内壁に張り付き、洗えていない場合もあります。
洗ったらぺたんこになりました。戻せますか
完全に乾く前なら、手でほぐして戻せることがあります。乾ききったあとは戻りません。中材のつぶれが原因なら、洗ったせいというより、もともと限界が来ていたと考えるほうが自然です。
浴室乾燥機だけで乾かせますか
乾かせます。ただし、平らに置ける台がないと片面しか乾きません。ハンガーを2本渡し、その上に寝かせる形を作ってください。3〜6時間ごとに裏返します。
洗ったあと、天日に長く当てても大丈夫ですか
生地の色が抜けます。ウレタンが入っているものは、日光で表面がぼろつく原因にもなります。日なたは午前中まで、そのあとは風通しのよい日陰へ移してください。
まとめ
- 洗えるかどうかは洗濯表示と中材で決まる。生地の見た目では分からない
- ウレタン(低反発・高反発)とそば殻は、水につけない
- カバーを月1度洗うだけで、におい方は大きく変わる
- 本体を洗うなら浴槽で押し洗い。ねじらない、絞らない
- 平らに寝かせて、中心が冷たくなくなるまで干す。厚いものは2日
- 洗えないものは、週1の風通しと部分拭きで足りる
洗い方より、乾かし方でつまずく人のほうが多い。ここだけ持って帰っていただければ十分です。
座布団は、洗った回数より風を通した回数で変わります。
週末に一度、日陰へ立てかける。それだけで、来年の夏も同じ座布団に座れます。
